Influx社などの洋上風力発電の基本情報

最終更新日 2024年11月15日 by nerdyf

洋上風力発電とは主に海洋の上において行われる風力発電のこと、もしくはその施設を指します。
洋上を表す英単語・オフショアを組み合わせてオフショア風力発電と呼ばれたり、洋上風力と略されることもあります。
陸上と比べて海上の方が強い風が吹くため、より大きな電力が供給できるというのが大きなメリットです。

洋上風力発電の発電機の形態について

なお洋上という名が付くものの、必ずしも海洋上だけを指すのではありません。
湖の上やフィヨルド、港湾内などに設置された設備に関しても同様に呼ぶことがあります。
発電機の形態は通常の風力発電のように地面に基礎が固定されたタイプもあれば、浮体式の基礎を用いたものもあります。
後者は特に海が深くて基礎を地面に設置するのが困難な場合に用いられ、浮体式洋上風力発電という名で実用化を目指し研究されている形態です。

洋上風力発電の歴史

歴史を見ていくと、最初に建設されたのは1991年ヨーロッパ・デンマークにおいてです。
この時を皮切りに、ヨーロッパが世界をリードして洋上風力発電の研究および開発を進めています。
およそ20年後にあたる2009年時点では、ヨーロッパにおける建設中の洋上風力発電所は26ヶ所でした。
2010年の発電量はイギリスが群を抜いており、他のヨーロッパ諸国を合わせた発電量とほぼ同等の数値の結果が出ています。
発電用のタービンに関しては、デンマークに本拠を構える企業が多くのシェアを占めています。
発電を導入した企業の数においても、他の海外諸国に比べてヨーロッパでの合計数の方が圧倒的に多いです。
タービン(発電用原動機)の1基あたりの発電能力は3MWが基準となっており、5MWまで高めることが目標とされています。

水深によって異なるタイプの基礎が導入されている

洋上における安定性の確保のため、水深によって異なるタイプの基礎が導入されています。
水深30m未満の場所では、直径6mの円柱形の基礎が使われることが多いです。
なお80mまでの場所では、重力着底型構造物に切り替えられます。
また場所によっては、油田やガス田で使用される鋼鉄製のジャケット工法が用いられます。
通常の風力発電とは異なり、タービンの設置場所はアクセスしづらい海洋上です。
そのため船を用いたアクセス手段を用意するなど、より一層の信頼性が重視されます。
ギアボックスの交換をはじめとした、重工業に分類される作業は海洋掘削装置が用いられます。
また設備の修理やメンテナンスのために専門の管理チームが組織されており、船もしくはヘリコプターでアクセスして実行するという構造です。

日本において洋上風力発電は非常に期待されている発電方法

陸地より遠距離にある風力発電所に関しては、管理チームのための居住スペースが設置されることもあるほどです。
排他的経済水域の面積が世界6位を誇る日本において、洋上風力発電は非常に期待されている発電方法となっています。
化石燃料や原子炉を用いず、自然からエネルギーを得る方法でありつつ、居住区を脅かさずに開発ができるからです。
可能とされる発電容量は、必要とされる電力量の10倍近くにもなるとされています。
ただ環境はあるものの、ネックとなっているのが台風です。
ヨーロッパよりも面積の規模がありながら開発が思ったように進んでいないのは、海洋上が毎年台風の通り道になっており、建設および維持の難易度が極めて高いからです。
導入予測がさほど高くはないものの、有望視されているため研究開発は進められています。

2019年4月に洋上風力発電普及法が施行される

日本では2019年4月に、洋上風力発電普及法が施行されました。
さらに同年7月には、経済産業省と国土交通省が共同で発電整備を進める4区域を発表しています。
対象となる区域は秋田県秋田県能代市の男鹿市沖と由利本荘市沖、千葉県銚子市沖と長崎県五島市沖の4ヶ所です。
加えて青森県の日本海側と陸奥湾、秋田県や新潟県を含む7区域に関しても一定の準備段階へと入りました。
また小型の浮体に風車を搭載した、次世代浮体式風力発電システムを同年5月に設置および運用を開始しています。
洋上に設置するという構造上、景観への影響が少ないのも利点です。
導入を大きく進めているアメリカにて近隣住民に聞き取り調査を行ったところ、景観への影響はあまり感じず陸地からも遠いため騒音に関しても目立った意見は寄せられませんでした。
懸念される問題としては、海洋生物への影響です。
発電基地の設置によって生息環境が損なわれたり、渡り鳥や回遊生物の移動に関する阻害が懸念されます。
海洋生物や鳥類に対しての対処が、当面の大きな課題です。

まとめ

今後温室効果ガス減少に関する動きがより一層活発化していく中で、自然のエネルギーを利用する風力発電には大きな注目が集まっています。
海洋面積の多い日本において、風力発電の場所を増やすことで火力発電のシェアを減らすことができれば大気汚染や温暖化が防止でき、エネルギーの輸入も減らせるなどメリットは非常に多いです。
新時代における発電の新たな潮流になるとして、新たな雇用やビジネスチャンスが生まれることも期待されています。

Influx 星野敦